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福島先生よりモクサス(MOXATH)の使用感を頂戴しました

福島 哲也先生
医療法人社団健育会 湘南慶育病院鍼灸科慶応義塾大学 SFC 研究所 所員
東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科 非常勤講師
灸法臨床研究会講師

「もぐさ燃焼解析システムMOXATH」の使用雑感 と可能性

現在、私は鍼灸の「臨床・研究・教育」という三足のわらじを履いているのですが、ことに「お灸」という
カテゴリーは「十八番(おはこ)」であり、一家言を持っています。このたび、(株)チュウオー様より
「もぐさ燃焼解析システムMOXATH」をお借りする機会 を得たので、自由な発想でいろいろなトライアルしてみました
(個人的には楽しく遊ばさせてもらいました)。これまでも、もぐさの燃焼温度を測定する機器はあったと思うの
ですが、MOXATH で「お灸」の未来予想図が大いに変わってくる予感がしました。
そこで、MOXATH の使用雑感と可能性についての愚見を述べてさせていただきます。

①臨床・研究分野での活用

灸効(お灸の効果)を左右する要因には、「選穴・取穴法」と「施灸テクニック」の2 つがあると考えています。 前者では、座標軸上の特定の点として経穴よりも反応の現れているツボを上手く捉えられること、後者では、生きた ツボの場の状態(凹み・硬結・圧痛など)に合わせて最適な灸刺激を与えられる艾炷(がいしゅ)を作ることが、 最低限必要となります。艾炷の大小・硬軟(質量および密度)・壮数は刺激量の調節には欠かせない重要なファクターで あると思います。 鍼であれば寸 3 (40 mm) や寸 6(50 mm) など長さに当たる糸状・ゴマ粒大・半米粒大・米粒大など艾炷の大きさと、 1番 (0. 16 mm) や 3 番 (0. 20 mm) に相当する艾炷の硬軟は、その場の状況(ツボの表情)に応じて変化させ、 施術者自身の手で自由自在に作り出さなければならないのです。また補潟の概念を持ち込めば、1壮ごとに灰を取り 除くときと灰の上に数壮重ねる場合、燃焼の緩急や熱感の持続時間など、それぞれ違った刺激が必要です。 私の臨床では 1 壮だけで終わるというケースは稀で通常は数壮(3,..,,_,7 壮)、ときには数十壮を要したり、 半米粒大(軟)→半米粒大→米粒大(軟)→米粒大→米粒大(硬)など 艾炷の大きさや硬さを変えながら連続施灸をする こともあります。MOXATHには5つのチャンネルがあるので、このような場合のそれぞれの燃焼温度曲線や有効熱量を測定する ことも可能なので、今後、ベッドサイドで見える景色が変わってくるようでワクワクしました。 また、研究しだいでは名人芸の再現や継承も可能ではないでしょうか。

②教育分野での活用

昨今、「お灸女子」や「妊活・温活」、あるいは「美容・美顔灸」などの造語も出現し、セルフケアとしてのお灸に興味を 持ったりする若い女性が少しずつ増えてきているようです。また、すでに台座灸や円筒灸(「痕が付かない、温かくて気持ち がいい」など耳障りの良いキャッチフレーズで知られている間接灸)などを愛用している一般のかたも少なくないようです。 その反面、もぐさをひねって皮膚に艾炷を置いて点火するお灸(透熱灸)を自信をもっ てすえられるというプロのきゅう師が 激減してしまいました。これは、学校教育での訓 練・指導方法に幾ばくかの問題があるのではないでしょうか。具体的に例を 挙げれば、もぐさを何分間に何個以上ひねるタイム競争とか、紙の上で艾炷を燃やして焦げ跡をチェッ クする方法などは、 個人的にはあまり意味がないと思っています。なぜなら、生身の人間 にすえなければ、「畳の上の水練」と同じことです。 先日、ある学校の学生さんが病院研修に来た時、MOXATH を使ってもらったいました。艾炷の大きさ(半米粒大や米粒大など)や 硬さも変えて施灸させて、温度曲線や有効熱量を画面のグラフや数値で確認してもらったり、学生さんと引率で来ていた教員での 比較をしてみたりもしました。学生さんは、艾炷を軟らかくひねったときと、硬めにひねったときの燃焼温度曲線がほぼ同じ だったり、有効熱量が極端に少なかったりしていました。ちなみに、教員のかたのは文住ごとに明確な変化があるカーブが 描き出され、学生さんたちへの面目はなんとか保てたようでした。 「うわぁ、面白い。これなら毎日でも楽しく練習できる」とか「うちの学校でも買ってくれたらいいのに」と笑顔でイキイキと していたのが印象的でした。 もちろん、人体への施灸でも必要以上の火傷をさせないような熱特性を持った艾炷を作れるようなスキルを身につけさせねば なりません。 MOXATH が、そのための心強い助っ人になる可能性は大きいと思います。また、学生さんや教員のモチベーション アップや他校との差別化には、最低1 クラスに5 台くらいは用意しておいても損は無いと思います。 「面白くこともなき授業を面白く、住みなすものはMOXATH なりけり」

福島先生どうもありがとうございました。